フラメンコの踊り手 山室弘美のホームページへようこそ

私のフラメンコ感

<真実の瞬間>

 

私にとってフラメンコとは“戦い”です。舞台で踊るときはフラメンコに対していつも挑戦者のような気持ちでぶつかっている、と言う感じです。
踊る前は異常に緊張するし、楽しい気分で踊れたことなんてめったにありません。
本当はもっと楽しみたいし、楽に踊りたい。でも、いつもいっぱいいっぱいで、
今の私にはそんな余裕なんて無いのです。
自分に嘘はつきたくないし、踊りにはそれが出るから本当にやりたい事をしたい。
何か凄い事をやってやろうとかあれも、こんなこともやらなきゃとか思っていたこともありましたが…

結局、本当にやりたいことではない限り、全然よくもならないんですよね。

それより、もっと大切なのは、唄やギターと呼吸を合わせる、という事。まずは聞く、という事が、結局大事だと思います。ただ合わせるだけでもなくて「じゃあ、これはどうだ?」とこっちも、レマタールで投げかけてみる。そして、唄・ギター・踊りが一体になった時、ほんの一瞬だけど強烈なマグマみたいなものがその瞬間を覆い、この上ない幸せな瞬間と遭遇出来るのです。その為に、踊っている様なものです。

 

人は産まれて、いつかは死を迎えます。その終焉は様々でしょう、死ぬ為に生きる。フラメンコも同様、始まれば必ず終わりを迎える。終わらせる為に踊る。激して、痛くて、そして歓喜があって、凄く深い。生きていく上でも人それぞれ必ず苦しく、悲しいこと、壁にぶつかったり、挫折したり、乗り越えたり。フラメンコも同じで、ただそれに、音・リズムをつけて唄っているのではないでしょうか。だから見るものを強烈に魅了するのだと思います


フラメンコは「生命力」。
スペインの人達は本当にいつも生命力に満ちているなーと思います。
好きなものを食べて、寝て、凄い早口でお喋りして、仲間が辛いときは一緒に泣いて、恋をして今を生きている。そして、スペインのくっきりした目の覚める様な青い空、照りつける太陽、乾いた空気、馬の歩く音、どこからともなく聞こえる歌声、老人の深いシワ。
暫くスペインに行かないでいると、充電切れになってしまいます。ただ、行っただけで元気になる。

そして、私も生命力を豊かにして、観てくださる人々に元気を与えられる様な踊りを踊って行きたい。
高級ではなく、最高のもの。それが私にとって最高の幸せな瞬間です。

やまむろひろみ